文字サイズ   
フィリピンでのバスジャックから、安全な香港を考える  8/31更新

フィリピン観光中の香港人観光客を乗せたバスが、銃を持った元警察官に乗っ取られ、子供や高齢者は解放されたが、人質15名が残された。8月23日、強行突破した警察官は犯人を射殺したが、人質8名が死亡、2名が重傷という悲惨な結果となった。日本では小さく報道されただけだったが、香港では新聞第1面をずっと占領し続けていたニュースである。
 
  香港政庁は黙祷の日時を決め、半旗をかかげ、公式行事としての式典が執り行われただけでなく、香港の各地で多くの市民が3分間の黙祷を捧げた。政府トップがフィリピン政府に抗議を行う一方で、香港に来ているフィリピン人を今回のことでいじめたり、暴力をふるうことがあってはいけない、との呼びかけも行われた。
 
  人質の3分の2が死亡または重傷という結果だけでなく、香港人の怒りは、警察の強行突破作戦(?)と言いながらも、バスの窓ガラスをハンマーで叩いても、叩いても、うまく割れず、警官の手から滑ったハンマーがバスの中に飛び込んでしまう等、テレビのニュースを見ている私でもいらいらする程のフィリピン警察の手際の悪さに向けられた。犯人が元警察官で、表彰を受けた人だったので、身内意識で鈍ったのではないのか、は私の感じ。ともかく香港人の怒りは大きく、8月29日の日曜日には、8万人が再発防止を願ってデモ行進をした程。フィリピンは中国と並んで、香港人にとって身近な行楽地なので、自分、家族、親戚・友人にとって、このような事件は二度とあってはいけないという思いで、暑い日差しの中、デモ行進に多くの人が参加したのだと思う。
 
  新聞が毎日何面も使っての報道なら、テレビも同様で、「どこのチャンネルでも」状態。軍事評論家のようなタイトルで大学の先生がフィリピン警察の突入方法の問題点を解説したり、香港の特殊部隊はこの時にはこうして人質を救出した。中国何々省で起きた事件では中国の特殊部隊はこんな風にして人質の被害を少なくした、等の解説付き特集番組も放映された。
 
  テレビを見ていて、ふと思い出したのは、25年前のほぼ同時期、8月12日の日航ジャンボ機墜落事故のこと。私はお盆休みを貰って香港から成田に到着した日だった。成田のホテルで一晩中テレビにかじりつき、翌朝から数日の旅行中も、観光もそこそこに、宿泊のホテルや旅館でテレビ漬けだった。あの時も、航空専門家、軍事評論家のような人が、墜落の原因や自衛隊の救出方法のまずさ等を解説していた。テロと事故、原因は異なるが、楽しかるべき旅行が一転悲惨な事故になってしまったのは同じ。広東語の番組を見ながら、こんな感じでの番組が続いていたなあ、と思った。
 
  フィリピン人をお手伝いさんとして雇っている家庭の多い香港では、何となくフィリピンを下に見るような風潮があり、今回の事件は、「遅れているフィリピンで発生した、とんでもない事件」、やっぱりフィリピンは、フィリピン人は、みたいに捉えている香港人が多いようだ。
 
  しかし、香港だって昔、と言っても私が香港赴任してしばらく位までは、海賊や山賊がいたのだから差不同だ。日本人観光客の乗ったバスが武装した強盗団に襲われ、身ぐるみはがれたことがあった。この事件の後、日本人学校のスクールバスをどう守るかという議論になり、父兄(男性)や、警備員を添乗させる案も出たが、大人が何人いても丸腰では武装集団に立ち向かえないということから立ち消えになったと聞いている。その少し前は、ある会社の日本人駐在員達が家族と共に何台かの車で出掛けた新界のカントリークラブからの帰り道、山賊に身ぐるみはがれたことがあった。なぜか車は取り上げられず、全員下着姿で車で戻ったとの話に、山賊には運転出来る奴がいないのか等も話題になったりした。
 
  そんな香港だったのが、この30年ですっかりきれいになり、世の中が落ち着き、1000人当たりの犯罪発生率では日本より安全となったほど。街を歩けばそこここに巡回中の警官の姿を見かける香港。そんなシステムを維持している香港は、香港人の努力あっての現在だと思う。しかし、ちょっと気を緩めれば、「犯罪都市香港」に戻ったり、「暗黒都市香港」になりかねないので、今回の事件を他山の石として、現在の、安心して歩ける香港を維持して欲しいと思う次第です。
 
  女連れで5スターホテルに宿泊に来た男が、女の身分証提示が出来ぬなら泊められない、と断られたホテルに、仲間と共に刀を持って舞い戻り、ホテルの警備員とチャンチャンバラバラ。なんだか江戸時代のやくざ映画のようですが、今年広州で実際にあった話(2010年7月13日付け香港ポストより)。香港から電車で2時間弱のところがこうなので、大変な努力がないと、今の安心な香港を維持するのは難しいと思うわけです。
 
  亡くなられた8名の方のご冥福と、重傷を負われた2名の方の一日も早い回復をお祈りいたします。
 
  関 俊也著

本 名 関俊也 (SokNet Planning Ltd.代表)
E-mail seki-s@soknet.com.hk
略 歴 昭和19年生、獅子座。東京理科大学理学部物理科卒。卒業後、折からの学園紛争で学士入 学するはずの大学がその年に限り学士入学を取らず、研究室でブラブラしているときにお もしろそうだと訪問したのが、コンピューター(その当時はリレー式コンピュータ)で日 本語を処理しているという会社。いつのまにか入社。1979年、同社香港オフィス創立で 香港に赴任、1992年に同社を退職。趣味で始めたパソコンに関するコンサルタントとして 香港に残り自営。1994年後半、会長をしていた香港日本人倶楽部パソコン研究会がインタ ーネットで大いに盛り上がり、1995年にその友人達とインターネットプロバイダーを設立、 その後、インターネットコンテンツを専門に扱う会社、SokNet Planning Ltd.を設立して 現在にいたる。
メルマガ無料登録   |   広告掲載   ||   お問い合わせ   |   ご使用条件   |   プライバシー・ポリシー サイト運営:
Copyright © 2009 The hong kong. All rights reserved.